パッシブデザインの観点では、夏は出来るだけ長い時間、窓から日差しが入らないように建物の計画をします。
夏に室内に日射が入ってしまうと、高断熱・高気密住宅だからこそ、熱が逃げにくく室内の温度が上がってしまうから。
この関係で、西側の窓も出来るだけ小さくしたりします。
しかし、「秦野の家」の建物は、思い切り南西に開きました。
この敷地だから得られるものは、この豊かな景観。冬の日差し。谷からの吹き上げる夏の涼風。
この気候風土を大切に、夏の西日対策を意識しながら家づくりを進めました。
どんなことを考えたのか、一例を少しお話ししたいと思います。
太陽と建物の関係を知る
こちらは「秦野の家」と太陽の動きの関係。
ホームズ君というシミュレーションを使っています。その結果、オレンジの矢印をつけた時間帯(夏だと夏は15時〜17時まで)に大開口から直達日光が入り込み意識した方がいいことがわかりました。
これは暮らし方の一つの目安になります。
ハニカムサーモスクリーンを設置する
ハニカムサーモスクリーンは、蜂の巣のように空気層があるブラインドです。
この中の空気が熱の動きを止めてくれます。(ワークショップでも、毎回話している断熱、です。)
特に使い勝手がいいのは、上にも下にもブラインドの位置を移動できるツーウェイタイプ。
全部閉じたら、太陽熱を遮り、室内の保冷効果がありますし、上だけ閉じたら、部分的に太陽の光を遮れる。
下だけとじたら、冬のコールドドラフトを防げる。真ん中だけ閉じたら、プライバシーも守れる。
これは一例ですが、暮らしに合わせて好きな位置に調整ができるので、いつも建主さんにおすすめしています。
日射遮蔽は外から考える
ハニカムサーモスクリーンは効果的なのですが、夏の日差し対策は、出来るだけ外側から。
外側で防ぐと、室内に伝わる熱量は大幅に減ります。
秦野の家で考えた対策は、7層のゆるやかな日除けレイヤー。
外側から「庭の微気候」→「カーテン*」→「カーテン*」→「デッキ(中間領域)」→「カーテン*」→「窓」→
「ハニカムサーモスクリーン*」で、緩やかに日射を遮っていきます。
(「*」をつけたところは、建主が暮らし方に合わせて自由に調整できる部分。)
中には「なんか建主さん、外にいちいちカーテンつけるの大変じゃない・・?」と思われる方もいるかもしれませんね。確かに、建築や設備でもできる限りのことは考えていますし、そこでもだいぶ効果あります。
このカーテンは常に使う必要はありません。
ただ、建主が「やっぱり夏暑いかも・・。なんとかしたい。」と思われた時に備えて、設計の視点から、ガマンを強いない、何らかの手立てを打っておくことを大切にしたいと思っています。
ちなみにこの写真を撮った時、カーテンが風に揺れて、そこから垣間見える山並みはとても心地よく、まるで風鈴のようでした。
このアイデア、すでに家づくりをされた方でもできる日除け対策です。
夏の日差し対策に困られている方の参考になると嬉しいなと思います。