習志野の家 -5年目の暮らしの様子-

2015年に竣工した「習志野の家」。
仕事場となる大きな土間、冬の日差しを家中に届ける吹抜け、隣地の庭への借景、十分な断熱と気密、夏の日除けや高窓による排熱の工夫、温水で基礎に熱を蓄える床暖房など、建主とともに「暮らしに合ったパッシブデザイン」の家づくりをしていきました。
あれから5年。現在どのような暮らしをされているかインタビューしてきました。


暮らしはいかがですか?

とても快適に暮らしています。
玄関・土間側にある1階の大きな窓からは隣家の緑がたっぷり見えて、毎日森の中の避暑地に来たみたいに感じます。秋になるとそこに柿が実るので季節を感じるし、とても絵になるんです。
キッチン側の小窓からも別の隣家の緑が見えて、周りが家に囲まれているとは思えない環境ですよ。

あと、日差しは周りの家とプライバシーを考えて、吹き抜けの窓から取り入れる設計になりました。昼間は照明をつけなくても明るいです。二階を見上げると、昼は空がとても綺麗に見えるし、夜も月が見えてとってもよい感じですよ。
土地探しの時に、冨田さん(当社代表)と、借景と日差しの取り入れ方をイメージした上で敷地を選んでよかったなと思います。

△キッチン側から土間を望む。隣家の緑を暮らしに取り込む。
△玄関の土間からキッチンを望む。抜け感をもたせた小窓の緑。
△吹き抜けの窓からふり注ぐ明るい日差し。昼も夜も、空を楽しめる。


今年の春はコロナウイルスの影響で家にこもっていましたが、改めてよかったなと思うのはキッチンスペース。
設計当初に「将来子供が大きくなったら家族で料理ができるように」と少し広め(幅1000mm)にとってもらいましたが、まさに今、家族で毎日料理を楽しんでいます。広すぎず、狭すぎず、その距離感が私たちにちょうどいいですね。

あと、家族の気配を感じて暮らせるよう1階と2階の隔たりを感じないつくりになっているので、例えば私たちが1階にいて、娘が2階でピアノを弾いているとき、練習に集中しているかどうか手に取るようにわかるんですよ。

△吹き抜けとコの字が型に広がる二階の室内

暖かい冬の暮らし

冬はとにかく快適です。家全体がふんわり暖かく、寒さを感じることがありません。
以前住んでいたマンションでは、ダウンベストを着て過ごしていましたし、仕事をする時はさらに毛布を羽織っていました。それでも手だけが冷えて辛かった。ここに引っ越してきてからは、真冬でも薄手の服で過ごしていますよ。

特に土間スペースはいいですね。我が家は玄関土間を広くとりワークスペースとして活用してますが、窓や扉の気密がよく冷気は入ってきません。温水床暖房で土間が温められているので足元も暖かいし、仕事するのにとても楽です。
休みの日は土間で家族でピクニックをして楽しんだり、子供の友達が来て遊んだり、いろんな用途で土間を楽しんでいます。

あと、冬の朝、布団から出たくない!起きれない!という日が無いですね。スッと起きて、床暖房の暖かさが直接伝わる土間キッチンに家族みんな集まって、朝ごはんの準備をします。冬は本当にストレスがなく楽に過ごしています。

床暖房はどんな使い方をされていますか?

1年目は10月の終わりに床暖房のスイッチを入れましたが、ここ数年は暖かい気候が続くので11月中旬にスイッチを入れています。スイッチを入れてから1日でなんとなくあったかくなって、2,3日でしっかりと機能し始めます。床暖房を使っていても湿度は40-50%をキープしているので乾燥もせず快適です。加湿器も使わないし、持っていたオイルヒーターや電気ストーブも使わなくなりました。暖房器具はもういらないな、と判断して手放しました。

夏を涼しく過ごす工夫

屋根の断熱材は一般基準より厚めなのですが、それでも夏は2階が暑く感じます。なので家族が揃っている時はエアコンを使いますね。断熱・気密が効いているのですぐに家全体が涼しくなります。
日中のエアコン設定は、28-29度くらいがちょうどよいです。寝る時に消していますが、朝まで涼しさが続くので寝苦しい日はありません。
あと、もともとエアコンが好きではないので、夫婦どちらか一人だけの場合は、排熱・通風のために窓を開けて1階で過ごしています。1階は比較的涼しいし、土間がひんやりしているので気持ちいいですよ。

夏の日差し対策は何かされていますか?

あらかじめ冨田さんと西日対策について検討していたので、西日が入るバルコニーには日除けタープをつけられるよう木製フレームの設置をお願いしていました。夏はそこにタープをつけています。さらに窓には木製ルーバーを取り付けているのでダブルで暑さを防いでくれます。他の窓には外に葦簀(よしず)を取り付けています。こういった工夫のおかげで、日差しが室内に入って不快になることは少ないですね。

5年目の建物の状況

家の状態は良くて、暮らしに不満もないです。北側の日が当たらない外壁に藻のようなものが付きはじめたので、適切な手当てを工務店のかしの木建設さんに相談してみようと思います。
かしの木さんは何もなくても年1回は訪ねてくれるアフターフォローがあるので、とても安心です。

家づくりを振り返って

家づくりは本当に楽しいイベントでした。
家を建てる時に「家に自分たちの生活を合わせるのではなく、自分たちの生活に合った家をつくりましょう」と冨田さんが言ってくれたのをよく覚えています。
そんな話もあって「自分たちはどう住むか」をかなり具体的に落とし込んで考えていたので、住み始めてからは、まさにイメージどおり。とても快適です。

その場所で何をするのか?自分の生活にリアルかどうか?そういった疑問を詰めていくと、大切なものだけが残りました。なので、家のどこも無駄な場所はありません。吹き抜け・土間とか、単に憧れや好みだけで決めていたら、後でさほど使わない愛着のない空間になって後悔していただろうと思います。

家づくりを自分でちゃんと考えたい方・誰かに全部お任せしたい方、いろんな方がいらっしゃると思いますが、ちゃんと考えたい方にとっては、気の合う建築家との家づくりはとても楽しい経験で、その後の満足につながる暮らしが得られると思います。

▷「習志野の家」家づくりの過程

※本取材はHAN環境・建築設計事務所と共同で実施しています。

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