[温熱環境コンサルティング] 敷地の魅力を生かす

快適で健康な住まいを実現する 設計のセカンドオピニオン -戸建住宅編-


両親の住まいの老朽化に伴い、二世帯に建て替えをされた住宅。
この住宅は一級建築士でもある建主(現職は大規模施設等の設計・監理)が自ら設計をされていますが、プロの設計士でも迷う”外とのつながり方”や”温熱環境”について、その悩みと解決に向けたアプローチを建主にインタビューさせて頂きました。

いざ設計すると難しい「外空間の取り込み方」


[宮崎さん]
私は田舎育ちだったこともあって自然の中で生活したり、畑をつくるのが好きだったんです。畑と家は一緒になっててもいいんじゃないかと考えていたり、”気持ちがいい外部空間が家に取り込まれている”というのが昔から好きでした。

仕事でも住宅の設計経験があるので、「敷地を読む」事が大切だというのはわかっていたんですが、いざ自邸を設計するとなると、じゃあ、どうやって敷地の周辺環境を取り入れるのか?と難しく。

僕なんかは図面かいていて、いいと思いつつも本当に他の方法はないのか?と常に思っちゃうから。

パッシブデザインプラスさんはこういった環境を取り入れた気持ちのよい空間というコンセプトがあったので、冨田さん(当社代表)に意見を聞いてみたいなと思ったのがきっかけでした。

△南・西側に抜けたリビング空間でインタビュー。宮崎さん(左)、当社 冨田(右)。

北側にある公園の豊かな緑に着目


[宮崎さん]
まず、自分のかいたプランについて忌憚ない意見が聞きたかった。温熱環境のステップの前に、周囲の環境とのつながりがどうなっているのかというとことの意見が聞きたかった。

[パッシブデザインプラス  冨田 享祐]
最初はざっとプランニングしてみて、その事に対する所見(どんな所が気になるか)・全体を見て欲しい、という感じでした。ざっと見て気になった所を返信しました。
それを何回か繰り返しながら、今度はもう少し具体的な事に入っていくと、断熱性能・窓の性能、より細部の相談をしていきました。

この家の敷地は台形になっています。道路を挟んで西側の集合住宅に緑が一定数あって、西に開く(西側に窓を設けて広がりを出す)のは大事だったんですが、もう一方、北側の少し離れた公園の緑も取り入れれば、計画がより魅力的になるかなということをぶつけました。

△外部環境のスケッチ(北が上となる。宮崎さん作成)

[宮崎さん]
その話を聞いて「あ、そうか!」という気づきがありましたね。
西側は緑豊かな環境だというのはわかるんですが、それを北側の緑ある公園まで目を向けて、ここ(西と北)全体をなんとか建物の中に取り込もうという所は、ものすごく大きな発見でした。

「裏」だった東側(隣家側)がパーゴラのある豊かな「表」空間に


西側と北側によい環境があるという所で拠り所がわかったのですが、最後まで設計に悩んだのは、隣地に接している(玄関のある)東側でした。
ここは、法規上1.5m空けなければいけないという風致地区の規定があったんですが、どうしても魅力的にならない。そういった所を悩んでいました。
「放っておいたら”裏”になってしまうね」「どうしたらいいか」という事を冨田さんと相談しました。

[パッシブデザインプラス  冨田 享祐]
もともとの図面を頂いた時に、北東の玄関が隣家に囲まれて、完全に(デッドスペースになる)”裏”で、少し寂しさを感じたんです。
ここをもっと玄関としてだけでなく、豊かな空間にできないかなと考えて、
・南側の親世帯の庭から玄関まで回遊性をもたせる
・そこに洗濯置き場の機能性ももたせる
といった空間にすると、もっと魅力的になるんじゃないか。
そのためには法規制の隣地からの1.5mという事を、もう少し大きくして、2.2mくらいとると豊かな空間にができるな、という。

△左がご相談後、右がご相談前のスケッチ(宮崎さん作成)
いずれも右端が東側。

[宮崎さん]
東側をなんとかしたいっていう所はあったんですが、まさか、(東側に)パーゴラを立ててここまで魅力的にするという発想が考えもしなかったので、そういった提案を頂いた時は衝撃的でした。
一年、一生かかっても発想できないアイデアだったのですごく感謝しています。

結果、建物を西側にずらして、東側のスペースをあえて2.2mくらいとってパーゴラを計画することで、より用途が豊かな空間が設計できたなって思っています。

取りこぼししていた東側の考え方もこれでカチッと決まって、そのアドバイスが起点で最後まで設計が進んだというのは大きかったと思います。

実際、子供達もこのパーゴラを通って、南側の庭に抜けたり、建物の周囲を全てでぐるぐる遊んで回れるような豊かな空間にできた。

△隣家に接する東側の空間。2.2m設けたことで回遊性・機能性のある明るい表空間に。これから植栽計画が始まる。

コンサルの価値


[宮崎さん]
提案してもらった中で、言われたら「そうだな」というのがすごく多かったんですが、自分でそれを発見するというのはなかなか難しい。

[パッシブデザインプラス  冨田 享祐]
相談をすると、その相手が自分の価値観なり立場と同じ横に立って考えてくれて、話していたら方向性が見えてくる・解決していくという、その感覚が一番大事で、その時に(コンサルという)価値を感じるんだと思います。

[宮崎さん]
温熱環境で決め手になったのは、完全な数値として出してくれるのと、完全なコストとして出てくるところで天秤にかけられた。
例えばコスト100かけて効果10、コスト50で効果10。じゃ、コスト50だよね。っていうそういったところが。

[パッシブデザインプラス  冨田 享祐]
実際のところは、もっとそんなわかりやすいバランスじゃないよね(笑)。

[宮崎さん]
(プランの中で)「二重丸」の選択ではなくて、いかに「丸」に近い「三角」を積み上げていくか、という選択もなかにはある。ただそれを一人でやるのはちょっとエネルギーがいる。

一緒になって考えて、一緒になってこれがいいんじゃないかという結論を導いていくそういう人がいる、というのは大きかったです。

△北・西・南に程よく開いた住宅。一階がご両親、二階が宮崎さんご家族の住まい。

△ 最終的にまとまった平面図(宮崎さん作成)。パーゴラや緑に囲まれた植栽計画も出来上がった。



動画撮影・編集 : 株式会社ラコルト

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