「多摩丘陵の家」は壁に50ミリの断熱材が入っていたものの、床下から屋根まで壁内に外気が通り抜ける建物構成の為、ストーブを消すと室温がすぐに外気温近くに戻ってしまいます。
冬は吐く息が白くなる環境の改善は必須でした。
「可能な限り原型を残し暖かく住み継ぎたい」というクライアントの思いにこたえられるよう、関係者でどのような改修工事をしていくかの協議を重ねていきました。
その結果、株式会社マツナガさんのご提案で、壁・天井の断熱改修は一部の杉板を取外し、セルロースファイバーを吹込む方法を採用しました。これで板張りの原型を留めながら、断熱補強が可能になります。
しかし、取り外す対象となる杉板(42年経過し美しく力ある杉板)は、しっかりと小さな釘で留めつけられています。
工務店さんには出来るだけ板を傷つけないで欲しいと伝えましたが「釘をバールで抜く時にそれなりに傷付きます」と。
当然のことです。
しかし、大工さんがいざ小さな釘を抜こうと板壁に向き合った時「かなり傷つける事になる」と判断。魅力ある施工方法に切り替えてくれました。(イラストご参照)
この大工さんは、宮大工の技術を受け継ぐ東京町田の鈴木工務店さん。
真剣な家づくりを積み重ねてきた現場監督や大工さんの大きな力を感じました。
多摩丘陵の家は、様々な人の手による工夫と知見で息を吹き返しはじめました。